
■ 個人投資家を狙う2つの「ストップ狩り」
1. ヘッジファンドが行う”ストップ狩り”とは
FX市場では、大きな方向性は常に大口プレーヤー(商業銀行、中央銀行、機関投資家、巨大ファンドなど)が決めています。 通貨相場を大きく動かすために必要な資金力は、平均的な個人トレーダーがどれほど大きく仕掛けても到底太刀打ちできない規模です。
ヘッジファンドの中でも規模の大きなものになると、自ら相場の流れを作り出し、個人投資家の資金をターゲットにするような手法をとることがあります。それが、ヘッジファンドが行う”ストップ狩り”と言われる手法です。
たとえば、仮にドル/円が100円と105円の間を行ったり来たりするボックス相場だったとします。ここで今、ドル/円が105円付近から段々と下がってきて、100.50円ぐらいになったとします。 この時、102円、あるいは101円でドル/円を「買い」で持っているトレーダーは、「100円を割れたらボックス相場が終わって大きく下落するかもしれない」と考え、100円ちょうどや、あるいはもう少し下の99.90円、99.80円あたりにストップロス(損切り)の売り注文を入れておくことになります。
ヘッジファンドは、まさにそこを狙うのです。 彼らは自らの資金力で大量の売り注文を市場に出し、強引に相場を下げようとします。狙いは100円~99.80円あたりに密集して入っている個人投資家のストップロス注文です。
大口の売り注文によってレートがみるみる下がっていき、100円を割れると、大量のストップロス注文が次々と巻き込まれ、さらに下げが加速します。そうやってパニック的な下げとなっていく中で、最初に売っていたヘッジファンドは、その下落の波の中で買い戻しを行い、悠々と利益を確定させます。これがヘッジファンドのストップ狩りというものです。
彼らの投資スタイルを少しでも知ることで、相場における危険な場面を回避できます。ヘッジファンドは市場でこのような仕掛けを行う存在なのだと覚えておいてください。
そして、この『大口によるストップ狩り』の動きをチャート上から論理的に読み解き、逆に彼らの動きに便乗しようとする相場分析手法こそが、当サイトで推奨している『スマートマネーコンセプト(SMC)』の核となる考え方(流動性の確保:Liquidity Grab)です。
2. FX業者のシステムによるストップ狩りへの懸念
当然のことですが、私たち一般のトレーダーには「どこにどれだけのストップロス注文があるか」は正確には解りません(チャートからある程度想定することはできます)。しかし、FX業者のシステム側では、自社の顧客の注文状況はすべて把握できています。
実は過去において、そういったストップロス注文がたくさんある価格帯に相場が近づいてきた時、意図的にFX業者がちょこっとレートを動かし、そうした注文を狩りに行くような不透明な価格操作(いわゆるストップ狩り)が行われているのではないかと疑われるケースも過去には存在しました。
何を言っているか理解できない方が多いと思いますので、順を追って説明します。ここでのポイントは、「顧客の損失=業者の利益」という構造になり得る仕組みが存在するということです。
■ FX業者とトレードの仕組みを理解する
FXのトレードにおいて、私たちが売りや買いの注文を出すと、多くの方は「為替市場(インターバンク市場)の中で直接取引が成立している」と思っているようですが、実際は違います。 インターバンク市場とは、金融機関や証券会社等の限定された市場参加者が取引を行う市場であり、個人が直接参加できる市場ではありません。
ではどうしているかというと、私たちはFX業者を経由して取引しています。これを相対取引(OTC取引)と言います。 取引は「トレーダー」と「FX会社」の間で成立しているわけですから、為替市場の実際のレートがどうであろうと、FX会社側は「自社のプラットフォームでどんなレートを提示するか」は基本的には自由ということになります。まず、これが大原則だと覚えておいてください。 各FX会社が微妙に異なるレートを提示しているのもそのためです。何社かのチャートを並べて見ていると、「あれ? なんでこの会社だけこんな不自然な値動きをするんだ?」ということが時折起こり得ます。
相対取引(DD方式)における利益相反の構造
私たちが「1ドル100円」で買い注文を出した場合、FX業者が100円でドルを売ってくれます。 しかし、このままでは、
- 顧客の利益 = FX業者の損失
- 顧客の損失 = FX業者の利益 となってしまい、もし顧客全員が勝ち続けた場合、FX業者は損失を抱えて潰れてしまいます。そこで業者は通常「カバー取引」を行います。
カバー取引とは、FX業者が顧客からの注文と同じ注文をインターバンク市場(他の金融機関)に出すことです。そうすることで自社のリスクを相殺し、スプレッドの差額を利益とします。 しかし、現実には、FX業界でのスプレッド縮小競争は非常に激しく、スプレッドの利ざやだけで十分な利益を出すのは簡単ではありません。
そこで、日本の多くの国内FX業者が採用しているのがDD方式(ディーリングデスク方式)と呼ばれる仕組みです。この方式では、FX業者は顧客からの「買い注文」と「売り注文」を自社内で相殺(マリー)し、相殺しきれず余った分だけをカバー先へ発注します。 つまり、相殺された注文のスプレッドは丸々FX会社の儲けとなります。
そして統計上、FX取引を試みた9割以上のトレーダーが最終的にお金を失っているという現実があります。 極端な言い方をすれば、FX業者は市場原理とも言うべき「顧客側が負ける」という統計学的確率論に基づいて利益を上げやすいビジネスモデルを持っているということです。
業者選びが極めて重要である理由
このように、国内のFX業者の多くが採用しているDD方式(相対取引)では、「顧客の損失=業者の利益」という利益相反の構図になりやすい側面があります。
そのため、システムの一時的なフリーズや、意図せぬスリッページ(滑り)、約定拒否などが発生した際に、トレーダー側から「意図的な価格操作(ストップ狩り)ではないか」と強い不信感を持たれやすいという構造的な問題があります。 実際、ある手法で大きく儲けたプロトレーダーが、「このタイミングで規約を変えてきたか」と業者側の対応に不信感を抱いたという話も存在します。
■ ヘッジファンドもFX業者も個人の資産はマイナスにならない
ヘッジファンド会社は、投資家との間で取引をし、運用手数料や利益に対するインセンティブ手数料を取ります。しかし、損失を出した場合には、その損失を埋めるまでは手数料を取らないのが原則です。 最悪の場合、会社が倒産したとしても、会社の負債を運用マネージャー個人が背負うことはありません。FX業者も法人である以上、同様です。
それに対し、個人の投資家は損失が出ればそのまま直接、自分の資産が減ります。誰も守ってはくれません。
実は、FX業者選びはトレード手法を学ぶのと同じくらい非常に重要な要素です。 こうした利益相反のリスクや不信感を極力排除するためには、注文の透明性が高い業者(ディーリングデスクを介さないNDD方式を採用している業者や、約定力に定評のあるプロ向けの証券会社など)を慎重に選定する必要があります。
大切なお金を守るために、まずは「相場の裏側」と「取引の仕組み」を正しく理解し、透明性の高い環境でトレードを行うこと。そして、大口の動きを逆手に取るSMCの知識を身につけることが、個人投資家が生き残るための第一歩となります。
